ペルシア絨毯ー産地特有の品質表記
ペルシア絨毯の品質を表す用語として、ラジという単位が一般的に使用されていることは、前回お話しましたが、産地によっては、それぞれ特有の用語・表記方法が存在します。以下、その代表的ものを列記してみましょう。
◆イラン・ケルマーン(ケルマン) … 80/40
<例> 80/40
最初の数字はたて糸の本数で、横幅1ゲレあたり80本のたて糸があることを示しています。次の数字は長さ1ゲレあたりの結び目の数(ノット数)をあらわしたもので、ラジ数と合致することになります。すなわち40ラジと同じ意味です。70/35、80/40、 90/45、100/50などの商品があります。
◆イラン・ナーイーン (ナイン)… la
<例>
チャハールラー chahar-la(またはチャールラー char-la)=4la
シェシュラー shesh-la=6la
ノフラー noh-la=9la
それぞれ糸を撚った本数を指す言葉で、糸の太さに対応し、織り密度に影響を与えることになります。
ラーは、本。それぞれ4(チャハール)本、6(シェシュ)本、9(ノフ)本の意味で、2×2、2×3あるいは3×2、3×3の撚りが施されています。数が多いほど糸は太くなり、織り密度も粗くなります。 ノフラーは約40ラジ、シェシュラーが約60ラジ、チャハールラーで約80ラジの見当です。
◆エスファハーン(イスファハーン)…kheft
<例>16ヘフト(16kheft)
縦糸100列ごとに印をつけ、織り密度をカウントしたものです。例えば、ドザル・サイズの絨毯で16ヘフトといえば、横幅約135〜140㎝間に1600の結び目があることを示し、これをラジ数で換算すると1600÷135×6,5で、約77ラジ=80ラジ見当の細かな絨毯ということになります。
◆イラン・ホラーサーン地方…moqat(qabar)
<例> 50モカート(moqat)または50モガート(moghat)
1モガートは12,000ノットを指し、これで労賃の支払の基準としました。 織り密度としては、1㎡あたりのモガート数で示し、50モガートならば600,000ノット/㎡で、約50ラジとなります。このモガートはペルシア結びの場合の評価単位で、マシュハドなどで用いられましたが、トルコ結びの場合は、1カバール(qabal)または1ガバール(ghabal)=14,000ノットの基準が用いられました。これは、19世紀の絨毯復興期にタブリーズからの大量の織り職人がマシュハドに投入され、トルコ結びとペルシア結びの両方が採用されていたためで、特殊な織り器具を使うトルコ結びの方が明らかにスピードが速いためでもありました。
次回は、ペルシア絨毯の故郷・イラン以外の国々の品質表記・尺度についての解説です。