Vol.3

ペルシア絨毯ーその品質表示

 

ペルシア絨毯の起源をパズィルィク(パジリク)絨毯やそれ以前にさかのぼるかどうかは、議論の分かれるところです。絨毯のふるさとと呼ばれるように古い伝統をもつことに間違いはありませんが、16世紀以前に遡る現存するペルシア絨毯はなく、今日の絨毯への流れをもつ16世紀サファヴィー朝以降の美しい曲線美をもつ名品が数多く伝えられています。伝統的なタブリーズ、エスファハーン(イスファハーン)、カーシャーン(カシャーン)、ケルマーン(ケルマン)をはじめ近代に発展を遂げたマシュハド、ナーイーン(ナイン)、ゴム(クム)など主要産地を中心にイラン全土で今日も数多くの絨毯がつくられています。このペルシア絨毯の品質を表す基準として、産地特有の表現が用いられる場合もありますが、イラン全土で、一般的に用いられているのが、RAJ(ラジ)という用語です。

 

※( )内の表記は、業界内で誤って使用されている産地名表記。参照のため記載。

 

◆イラン・タブリーズほかペルシア全体 ーRAJ

 

ラジとは列を意味する言葉で、横1ゲレ(1gereh)≒6.5cmあたりのラジ(列)の数が、織り密度を表す単位となり、品質評価の値として用いられます。例えば、50ラジ((50RAJ)の絨毯といえば、横幅1ゲレあたりに50列の結びがあることを指し、また、ペルシア絨毯は長さに対してはほぼ正方の結びが生じることから、6.5cm角に50×50の結びがあることを意味しています。これをノット数に換算して表せば、50ラジの絨毯は、約6,000kn/dm2, 380kn/in2の密度をもつ絨毯ということになります。

 

タブリーズなどは、近年1ゲレを7cmとして換算し、35ラジ、40ラジ、50ラジ、60ラジなどの商品が出回っています。1cm四方に10×10の結びがある絨毯は、6.5cm換算だと、65ラジの絨毯ですが、7cm換算だと70ラジの絨毯という表記になります。

 

ところで、この単位は、ほぼ5ラジ単位の大まかな目安として一般的に用いられており、ひとつの単位となっています。したがって、正確な数値として認識すべきものではありませんので、この点を留意しておくことが必要です。

 

また、余談となりますが、1cm四方に10×10の結びがあるということは、1ミリメートルに1つの結びがあるということで、非常に緻密な絨毯ということになります。絨毯は、必ずしも緻密であればあるほど良いというものでもありませんが…織りの細かさは、手間の尺度として、その分価格に反映されているのも、また事実のひとつです。近年の工房作品の中には、差別化を図るためか、こうした細かな織りの絨毯よりも、さらに細かな80ラジを越える絨毯も数多く見かけるようになりましたが…果たして良い事かどうか…多少、疑問の残るところではあります。

 

※1ゲレ6.5cm換算例

 

65ラジ=6.5cm四方に65の結び目=65×65=4,225knot/6.5c㎡

=1㎝四方あたり  100knot…(65÷6.5)×(65÷6.5) = 100knot

 

※1ゲレ7cm換算例/タブリーズ

 

 70ラジ=7cm四方に70の結び目=70×70=4,900knot/7c㎡

1㎝四方あたり100knot…(70÷7)×(70÷7)=100knot

 

 

次回、主要産地のペルシア絨毯について、見てみます。